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ネット依存の子どもたちへのアプローチ 〜動機づけ面接の活用〜 -青木治-

人が行動変容を起こす場合のアプローチを周りの人たちがどのように行うのが効果的かということについて「動機づけ面接」の観点から説明します。

これだけスマホが普及してしまうと、もはや子どもだけではなく大人であっても自分の意志だけで使用時間等のコントロールをすることは困難でしょう。
夢中になってネットにハマり、何も考えていないように見える子どもであっても心の中は「やめたい」けど「やめられない」という両価性の中で苦しんでいるかもしれません。
その子どもたちに対し周りの大人が、「スマホを使う時間を短くしなさい」、「ネット依存になると〜な恐ろしいことになるよ」等々説教をしたり脅してもまったくの無駄です。
子どもたちは大人の意に反して益々ネットにハマっていくでしょう。
これはネット依存だけではなくニコチン依存やアルコール依存も同じです。

人は天秤のように「〜したい」けど「〜できない」という両価的な状態の中で揺れている時に、その一方に強い説得を受けると逆に触れてしまうという性質を有しており,行動を変えないための「正当化」をむしろ助長させてしまいます。
何故か?
人は人から言われて変わるのではなく、「自分のことは自分で決めたい」からです。
ではどうしたら良いのでしょうか。

そこは「動機づけ面接」の手法が役に立つと思います。
一番大切なのは子どもの心に「正確に共感」する。
そのためには子どもの話に耳を傾けてスマホやネットと現実の間で一体何が起こっているのか、何に困っているのか、本当はどうしたいのかということについてしっかり聴いて理解をし、説教をするのではなく、一緒に考えて問題を解決していこうという姿勢を示す必要があります。
そして、こちらからこうしなさい,ああしなさいと指示するのではなく、子ども自身が考えて,子ども自身の口から「スマホから少し距離を置いた方がいいよね…」「時間を決めた方がいいかな…」と言わせることが非常に大切です。

このように今の行動を「変えたい」,「変えよう」という発言をチェンジトークといい、動機づけ面接ではこのチェンジトークを大事にし、より多く本人の口から出せさせて、「距離を置きたいという気持ちはあるんだね」とか「やめたいという気持ちは持っているんだ」というようにチェンジトークに反応し,強化をしていくということを行います。
紙面の都合で詳しく説明することはできませんが、動機づけ面接に係る多くの書籍がありますので、是非お読みいただければと思います。

ポイントは子どもに向き合ってしっかり話を聞き、一緒に解決していく姿勢を示し,そしてチェンジトークが出てきたらスルーをしないで反応をすること。
まずは試していただければと思います。

青木治(あおきおさむ) /帯広少年院長 法務教官
長年、少年院、刑務所等の矯正施設において被収容者の教育に携わっている 動機づけ面接トレーナー
著書(共著)に『矯正職員のための動機づけ面接法』(矯正協会出版)がある

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