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ライブ配信サイトが生む「ネット依存」 - 掛札 昌邦(かけふだ まさくに)-

「ネット依存」という言葉を聞くと、多くの人はその原因として真っ先にオンラインゲームやツイッターに代表されるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を思い浮かべるかもしれないが、実はその陰で新たな問題が生まれている。インターネットのライブ配信サイトの存在だ。

ライブ配信サイトとは、個人でもウェブカメラの付いたパソコンやスマートフォンさえあれば、撮影したライブ映像をネット上で配信できるもので、その手軽さから若者を中心に人気を集めている。視聴者のコメントが放送画面に映し出される仕組みを使って、配信者と視聴者が双方向でやり取りできるのが最大のウリだ。放送の内容は、雑談やゲーム、散歩、旅行、料理など多岐にわたり、視聴者は自分のニーズに合った配信を楽しむことができる。現在、そうしたサイトは数多くあるが、中でも有名なのが「ニコニコ生放送」(ニコ生)と「ツイキャス」の二つのサービスだ。ニコ生は、月額540円の利用料金を払わなければ放送できないが、それにもかかわらず夜間の時間帯になると、数千にも上る番組が配信され、にぎわいを見せている。一方、ツイキャスは無料で配信できることから、中高生の間でブームとなり、2015年にはサービス開始5年という速さで、登録利用者が1000万人を超えた。

利用者が増えるにつれて、問題も生じている。配信にはまってしまい、仕事や学業に支障をきたす利用者が後を絶たないのだ。東京都内に在住する無職男性のAさん(29歳)もその一人だ。Aさんは、会社員だった26歳のときにライブ配信サイトを視聴するようになったが、それだけでは飽き足らず間もなく自身で配信も開始した。当初は平日の夜や休日に1、2時間配信する程度だったが、視聴者が増えていくようになると、そのことが楽しくなり、平日にもかかわらず、明け方まで配信することも珍しくなくなった。当然、寝不足のまま会社へ行っても、満足に仕事ができるはずがなく、結局は会社を辞めるはめになってしまったという。

この他にも、新婚でありながら家事そっちのけで配信にのめり込み、離婚してしまった女性のケースや配信で人気が出たことで学業がおろそかとなり、通っていた名門私立中学を退学してしまったケースなど、配信を始めたばかりに人生が狂わされる事例は枚挙にいとまがない。

多くの場合で共通しているのは、いったん配信に没頭してしまうと正常な判断ができなくなってしまうということだ。Aさんの場合も仕事をやめてから、ようやく自分が異常な状態だったことに気付いたという。このことからも分かる通り、必要なのは周囲の助けだ。もし家族や友人がそうした状態に陥ったら、決して頭ごなしに注意してはならない。いきなり配信をやめさせるのは難しいので、時間をかけて徐々に頻度を下げさせることが肝心だ。配信に代わる新たな楽しみを見つけてあげるのも効果的だろう。手遅れになると、取り返しのつかない事態になることもあるので、家族や友人の異変を感じたら、早い段階での対処が求められる。

掛札 昌邦(かけふだ まさくに)/記者
法政大学経営学部卒。通信社勤務を経て、現在はニュースサイトで芸能分野などを担当。

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