特集

Vol.2 韓国のInternet依存症事情

日本ではインターネット依存症の認識、治療対応はまだまだ遅れているといえます。

2012年2月に福岡で行われた『日韓共同フォーラム「脱メディア」』に行ってきました。
その中で発表された、韓国のインターネット依存症の実態と対応についてまとめたものをアップします。

韓国だけでなく、インターネットを利用している他の国々では文化、環境、国民の意識は日本と異なる部分はありますが、ネット依存に対する危機意識の共有は必要なことだと思います。
各国の取り組みを参考にしながら、日本もインターネット依存から家庭や、社会を守るために何をすればいいか考えていきたいですね。

◆韓国のネット依存の定義

ネット過多使用によってネット使用に対する禁断症状を耐性の欠落を持ち、そのため利用者の日常生活に支障が誘発されている状態』韓国ではネット中毒を精神病理現象としている。
ネット中毒の下位分類は国家・文化によって異なる。韓国の主要5大分類は『ゲーム中毒』『検索中毒』『ソーシャルネットワーク中毒』『とばく中毒』『アダルトサイト中毒』

◆ネット中毒の類型

  • オンラインゲーム 7〜8割 (オンラインゲーム依存は男子に多い)
  • ウェブサーフィン
  • チャット・SNS中毒 (SNS中毒は女子に多い)
  • 買い物

*アメリカではフェイスブック中毒が問題になっている(2012年)

◆ネット中毒の4大原因

  • 心理的要因
    低い自尊心・憂鬱・不安、注意力欠陥多動症障害
  • 家庭環境要因
    権威的・放任的養育態度、家族間のコミュニケーションと信頼の不足、家庭崩壊 (親に禁止されるとしたくなる心理・親が依存のため、子どもも依存になる)
  • 社会環境要因
    激しい生存競争(韓国 勉強時間世界一・睡眠が少ない世界一)社会的ストレス、代替的余暇の不足、健康的な情報文化の未形成
    (21世紀に韓国は情報化で生き残る選択をした背景も影響)
  • ネット要因
    匿名性(ゲームの中で神になれる)利用の便利さ、楽しさ、速度、即時反応性、相互作用性

ネット中毒者は様々な身体的・情緒的・日常生活上の障害症状をみせる。

◆ADHDと相互関係にある

  • ADHDだからネットに依存するのか、ネットに依存するからADHDになるのか定かではない。
  • ネット依存症を発症するにつれ他の疾患も誘発する。

◆ネット中毒の発展段階

1段階 好奇心段階 チャット・アダルト、ゲームに好奇心から参加
定期的に接続しながら仲間と情報交換
2段階 代理満足段階 現実にない楽しさをネットで満喫
暴力性、邪悪性、淫乱性の内在的本性を発揮
ゲームの達人としてその世界で尊敬される
3段階 現実逃避段階 もっぱら接続状態だけを渇望

◆2010年ネット中毒実態調査の結果   対象:9歳〜39歳のネット利用者

ネット中毒者 8.0% 174万3000人 毎年減少する傾向
うち青少年が 12.4% 87万7000人 成人が5.8% 86万6000人
ネット中毒も『高危険群』と『潜在的危険群』に分類され調査されている
高危険群   1.4%(約31万7000人)
潜在的危険群 6.5%(約142万6000人)
青少年の中では小学生の中毒率が最も多く、中毒年齢の低年齢化傾向を反映している。
今後の予測として、スマートフォンの普及・拡散によるスマートフォン中毒が広がる恐れがある。家庭環境の問題。低所得者層・片親家庭・祖父母と孫のみの家庭など、社会的弱者階層の青少年が一般家庭より中毒率が高い
*依存全体は減少傾向にあるのに、高危険群は増加している。
*小中高大の各学生に調査した結果、小学生に比べ中学高校の方が依存は少ない。しかし大学生になるとぐっと増える。厳しい受験戦争で抑えられた反動・解放感が原因と予測されている。
*ネット使用人口の低年齢化 PCやスマートフォンで子どもをなだめる→小学生で依存してしまう

:アメリカでも深刻な問題・モバイル機器を使う年齢1歳以下で10%、8歳以下で52%
スマートフォン中毒率 スマートフォン利用者全体に占める、スマートフォン中毒者の割合は11.1%
(青少年25.2%  成人9.4%   男子11.9%  女子10.2%)
ネット中毒者でスマホ依存30.2%、一般利用者でスマホ依存は9.2%で3倍という結果が出ており、ネット依存とスマートフォン依存の相関性が高いと予測される。

◆韓国のネット依存の取り組み

国家情報化基本法などの3つの法律に基づき、行政安全部など7つの部署がネット中毒の予防及び解消に関する総合計画を樹立し横断的に対応している。
幼稚園児から成人までのライフサイクル別予防教育(オン/オフライン教育)及び広域自治体の中毒対応センター、市群単位の協力機関に」おける中毒水準別相談、治療型寄宿学校(キャンプ)の運営
ネット中毒専門相談者の養成及び尺度開発(数回尺度を見直している)、実態調査及び政策研究など
*乳幼児の尺度を設定 *幼稚園・保育園での対策 *子ども達のネット中毒を知る

◆韓国のネット中毒対応策

▼国の部署・関係機関によって役割分担されている

  • 教育科学技術部 学校教育に協力
  • 行政安全部 ネット中毒政策を統括
  • 女性家族部  毒理療及び青少年保護
  • 文化体育観光部 ゲーム中毒に対応
  • 地方自治団体 政策執行に協力

▼制度

区分 内容 対象 主要部署・施行年
強制的シャットダウン制度 深夜時間帯0時〜6時までゲーム利用を 遮断
(シンデレラ法)
16歳未満 女性家族部
(2011.11)
選択的シャットダウン制度 父母が要請する特定時間帯にゲームの利用を遮断 18歳未満 文化観光体育部
(2012.01)
クーリングオフ制度 ゲームを遮断して2時間以上するか1日4時間以上
するとゲームを遮断
小中学生 教育科学技術部
(施行は未定)

『ネットRESUCUEスクール事業(韓国女性家族部)』
キャンプの目的急速に発展したネット事業の陰に、各種有害な情報が溢れゲームや仮想現実にのめりこみ情緒的反応を奪われた青少年の問題が日々深刻化。ネットRESUCUEスクールは、このような問題を改善するために、全国的に実施された11泊12日の寄宿型治療プログラム。相談治療とチャレンジ、レクリエーション、家族活動により構成されている多面的文化プログラム。

  • 完全メディア機器禁止の環境。
  • ネットに替わる代案活動をすることですとれる解消法を探す。
  • ダイビング・クライミング・森治療などの経験をする
  • 現実感覚の低い子ども達に仮想世界の虚構性を理解させる
  • 日常への復活

先生のような立場のメント(mento)1人と子どもメンティ(menti)2人はキャンプ中常に行動を共にする。大学生で兵役を終えているメントはルールに従う訓練ができていて、集団行動にも慣れている。その経験からもメンティの指導に適任。子どもたちは自分に甘い先生より、奮い立たせてくれる先生を好む傾向にある。キャンプ後は半年間アフターケアもあり、相談にも対応してくれている

参加した15歳の少年とその母のインタビューから

キャンプ参加は本人の希望。
キャンプの存在を新聞で知り、母親にキャンプ参加を頼む。
その時の母親の心境は『他の15歳の少年の生活となんら変わりないのにキャンプする必要があるのか?』少年のネット利用に問題意識は全くなかった。
少年は『お母さんの目に見えているのはPCの前に4〜5時間座っている僕。
でも部屋に入ってからもずっとスマートフォンを利用しているんだよ』と母を説得。
キャンプに参加。
キャンプは国の運営のため、11泊12日なので参加費はわずか日本円で8000円弱。
キャンプ参加前は1日の大半をネットで過ごしていた少年が、1日2時間の利用をコントロール出来ている。
代案活動で覚えた読書を今も好んでしている。
スポーツも継続。将来は医者になりたいとの夢も持っている。

ネット依存治療キャンプは、上記以外に様々な部門で実施している。
ソウル特別市 I Will センター(HPがあり、日本語でも見られます)クムトリ(夢の木)プロジェクト。
以下クムトリプロジェクトについて。

3-3-6-12サイクル
3ヶ月 個人相談 両親と子どもが一緒に参加する相談教育強化プログラム
3ヶ月 集団活動 多様な文化活動を応用した文化芸術専門プログラム
12ヶ月 学校適応準備及び事後管理〜再発防止のための代案活動及び自己管理のための 多様な青少年支援プログラム
NEWクムトリプロジェクト
4ヶ月 自分探し〜集団相談、個人相談、心理検査など
1ヶ月 治療キャンプ文化体験〜夏休みを利用した治療キャンプ及び文化体験活動
4ヶ月 プロジェクト〜治療をかねた代案活動の動機づけ、達成感を獲得するための公演及び作品展示活動

ソウル特別市 ネット中毒予防センター I Willセンター (事業主体ソウル特別市)
事業内容=4つの分野

相談治療事業 予防教育事業 研究事業 広報事業
*個人相談/心理検査
*集団相談/家族治療
*訪問相談
*表現芸術治療
*治療キャンプ/家族キャンプ
*専門医との連携
*ネットの過多使用長期プロジェクト
*クムトリプロジェクト
*梯子プロジェクト
*対象別予防教育
*町アウトリーチ
*父母教育
*指導者教育
*予防人形劇
*青い成長バス
*代案遊び活動
*多文化家庭青少年教育
*予防講師養成教育
*研究報告書発刊
*プログラム開発
*報告大会
*相談事例発表
*シンポジウム/フォーラム
*ワークショップ
*健全サイバー文化キャンペーン
*Uクリーン青少年文化広場
*大衆交通広報
*ホームページ運営
*広報物の制作・配布

◆ネット中毒の個人治療

キム・ヒョンス関東大学教授・明知病院精神科医・成長学校『星』主催者
ネット中毒治療に最もよく使われているのは認知行動療法。

  1. ネット使用状況の調査
  2. ID及び主要使用分野に対する相談
  3. ゲーム(チャット、セックス)中毒の類型
  4. ゲーマー、チャッターとしての自分の類型
  5. 総合評価及びネット使用パターンの変化追求
  6. 二番目に面白いものを発見する
  7. 家族と楽しむ方法を作っていく
  8. 失うものと得るものを考える
  9. ネットをしないで過ごしてみる
  10. 自分の自己調整能力についての自信を持つ

ネットゲーム中毒者の治療は、共存疾患や先行病理の治療だけでは好転しない。ネットを使用せずに過ごすことは困難。

◆治療失敗例

  • 共存疾患や先行病理が良くなればすべてが良くなると仮定してしまう
  • 中毒を強調しすぎたため治療に必要な人間関係を結ぶことに失敗してしまう
  • 親の教育に失敗してしまう
  • 現実の代案活動や対人関係を再構成するのが難しい

ネット中毒の初期面接においてゲームと関連した深層面接が重要。ゲームとゲーム自体の要素に関する調査について提案し、ゲームの種類によって治療的アプローチが異なりうる(仮説)

●ゲームの種類(治療のアプローチ)
ロールプレイングゲーム  戦闘型 (怒りの調節訓練・鬱)
社交型 (自己主張訓練・鬱)
一人称視点シュミレーションゲーム (衝動調整プログラム)
戦略シュミレーションゲーム    (性格診断後、対人関係訓練プログラム)
●ゲームの使用場所
家(引きこもり・内向的)vs ネットカフェ(外向的・反社会的可能性)
●ゲームのレベル
低レベル vs 高レベル (ゲーム経歴の反映)
●ゲームで選択するキャラクター
戦士 vs 僧侶(プレイパターンの反映)
●ゲームレベルアップの家庭
狩猟(ポイント稼ぎ) vs 購入(ゲームに費やす時間及びレベル競争の程度)
●ゲームギルド(グループ)の加入状況
加入 vs 未加入(ゲームの中での友人関係の反映)
●ゲームアイテムの販売経験
経験あり vs 未経験(ゲームと関連した経済問題)
●ゲーム動機
怒り型、社交型、成就型、ブランド型、探索型

ゲームの種類によって核心的な情緒や精神病理に違いがある。
ロールプレイングゲームは憂鬱を癒す方法であり、一人称視点シューティングゲームは不安や衝動調整の困難を解決するための方法として使用されている。

以上、2013年2月18日19日に福岡で行われた『日韓共同フォーラム「脱メディア」』で報告された韓国のインターネット依存の状況とその対応についてまとめました。

▲ページTopへ