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ネット依存の背景にあるもの - 石川 結貴 -

「ネット依存」と聞いて、どんな様子を思い浮かべるでしょうか。

1日中パソコンの前に座って、ずっとゲームをやりつづけている人。

歩きながら、食べながらといった「ながらスマホ」状態で、延々SNSをチェックしている人。

だらしない、暗い、変人、――こんなイメージを持たれるかもしれません。

実際、ネット依存に陥っている人はこうした状態になりがちなのですが、ではいったいなぜ、ここまでネットにのめり込んでしまうのでしょうか。個人の性格や生活環境といった理由もありますが、コトはそう単純ではありません。

私はネット依存に陥った女性や子どもを取材してきました。あくまでも取材の範囲に限ったことですが、特に女性の場合、まじめでコツコツ努力するタイプの人ばかりでした。

よりによって「まじめで努力家」の人が、なぜネットにのめり込むのでしょうか。たとえばネットゲーム(オンラインゲーム)で言えば、複数の人とチームを組んでプレイすることが多々あります。チームを組むわけですから、リーダー役や調整役、フォロー役など、人と人とをつなぐ能力に長けた人が必要になってきます。

女性はもともとコミュニケーション能力に優れているため、こうした役割にストンとはまります。仲間から頼られたり、仲間のためにとがんばりすぎて、どんどんネットにのめり込んでしまうのです。

チームではなく、個人と個人のつながりの場合も同様です。たとえばSNSのメッセージ交換では、どんなに忙しくても返信しないと悪いとか、相手に喜んでもらおうとか、ついサービス精神のようなものを発揮しがちです。

これも女性の特徴でしょうが、「女同士の同調圧力」が強いためみんなに乗り遅れまいと必死になったり、「おせっかい精神」で過剰な気配りをしたりと、ますます離れられない状況に陥るのです。

さらに、まじめな人は「NO」を言えないことがままあります。疲れていても、相手との関係に不満を感じても、はっきり「NO」が言えないのです。

すると、「NO」が言えない状態に悩み、自分で自分を追い詰めてしまいます。「私がはっきりしないから、こんな状態になったんだ」とか、「今さら自分の力ではどうしようもない」とか、要は心が折れるのです。  

私が取材したある女性は、毎日泣きながらゲームをやっていました。つらくてたまらないのに、「やめられない」のです。彼女は自分の弱さに自責の念を持ち、自信を失い、正常な判断を下せなくなっていました。

ところがそんな状態を、家族や周囲の人にはまったく気づかれていなかったのです。女性、特に専業主婦やパートタイム女性の生活は家庭を中心に回っているため、「異変」は外の人にはわかりません。

ひとつ屋根の下に暮らす家族にしても、「個」を大切にするあまり深く干渉せず、結果的にお互いの状況に関心が薄くなっているのでしょう。 「見えないところ」で進むのが、女性のネット依存の怖さです。周囲だけでなく、当人にも、自分が異変に見舞われていることが見えないのです。

今、ネット依存に対する取り組みや、専門的な治療が動き出しています。一方で、そもそも自覚がない人、「見えないところ」で依存が進行している人をどうすればいいのか、大きな壁が立ちはだかっていることも事実です。

学齢期の子どもを対象にした各種の調査でも、男子より女子のほうが依存度が深刻という結果が出ています。
彼女たちがおとなになったとき、ますます「見えない依存」が増えるのではないか、私はそんな危惧を抱いています。

石川 結貴(いしかわ ゆうき)/ジャーナリスト
家族、子育て、教育問題などを独自の視点で取材。豊富な取材実績から現代家族のリアルな問題を描き出す話題作を次々と発表してきた。単行本の刊行や講演活動、テレビ出演など多方面で活動する。 2013年には、第61回日本PTA全国研究大会の基調講演者に選出された。
主な著書/ *「ルポ 子どもの無縁社会」(中央公論新社) *「心の強い子どもを育てる〜ネット時代の親子関係」(花伝社) *「ルポ 居所不明児童〜消えた子どもたち」(筑摩書房/ちくま新書) 他

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